2010年5月22日土曜日

アラウィは第一党だが後手に回る

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☆★アラウィは第一党だが後手に回る
Allawi ahead, but falls behind
アジア・タイムズ 2010年5月20日付
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http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/LE20Ak01.html

May 20, 2010
By Sami Moubayed

 ダマスカス発--3月のイラク総選挙において、一部再集計においても、最高裁決定においてもアラウィ元首相が勝利したものの、彼が次期首相になるという保証は何もない。

 また月曜日(17日)には、バース党との結びつきを理由に失格とされた9人の当選者も、再審理によって当選を宣告された。そのうち7議席はアラウィのイラキーヤ陣営だったために、これでイラキーヤ陣営は国民議会に91議席を確保し、最大会派となった。

 マリキの法治国家連合は不幸なことに89議席にとどまり、現職であるマリキ首相とその支持者は、選挙の不正を申し立て、票の数え直しを求めたのだった。そしてマリキは、バース党関係者の失格宣言を企んだ政府機関を督励したのだった。

 しかし法廷がアラウィの明確な勝利を宣言したことは、司法が中央行政府からの独立性と中立性を示したものと評価された。他方、再集計は選挙委員会の株を押し上げた。マリキは法治国家連合が首都で過半数を制したはずだと主張したが、数え直しの結果は最初の数字とほぼ同じものであった。

 マリキが属するシーア派社会においてさえ、マリキへの祝福は期待されてなかった。シーア派聖職者であるサドルは、マリキがブッシュ政府と親密になったとき彼と仲違いした。

 それでもマリキはあきらめなかった。彼はシーア派の宗教政党であるINA(イラク国民合意)と連携することで自分の立場を誇示した。INAとマリキの会派が連合することで、国民議会の過半数である163議席に4議席足りないだけになった。

 イラクの選挙法では、議会の最大会派が新政府樹立の提案を主導することになっている。現時点では、議会の最大会派は選挙で第1党になったアラウィではなく、選挙では2番手だった現職のマリキとなった。

 INAは過去にマリキと口論したにもかかわらず、両者が共有する共通の地盤を失うことはなかった。INAの宗教的なルーツは、INAであれマリキであれアラウィとも共通するもので、サドルもまた主要メンバーである。アラウィ自身は元バース党員で世俗主義者であり、宗教勢力が政府を掌握することを憂慮している。

 INAとマリキ周辺は、どちらも、テヘランにならって、神権政治のミニ政体をバグダッドに築きたいと熱望している。両者とも、スンニ派社会と和解するうえで、サダム・フセイン政権を生み出したスンニ派に貸しがある。彼らは2003年のフセイン政権崩壊まで何十年もフセインとたたかったのだ。新しい連合会派はイランの影響を深く受けており、フセイン政権の30年間、イランが彼らに資金提供したうえ、安全地帯を提供していた。クリストファ・ヒル米国大使は、この連合を「シーア派巨大政党」と呼んだ。

 この権力バランスのせいで、アラウィが首相になれない可能性がでてきた。アラウィは国民議会選挙で最多議席をとったものの、主要な政治勢力が彼を承認しなければ、政府を形成することはできないだろう。

 もし影響力の大きい政治家が野党側に転じる決意をしたら、それはアラウィにとって地獄となり、彼を引きずり下ろそうとして暴動やデモが展開されるだろう。もっと悪い展開だと、彼らは主要都市の街頭に惨状を生み出すだめに自派の民兵を使うこともありうる。

 スンニ派教徒はアラウィを拒否しないし、世俗主義を拒否することもないが、マリキの運命と一蓮托生の保守的シーア派は、アラウィ首班の内閣には参加を拒否するだろう。またアラウィがためらうことなく、イラク国内へのイランの影響拡大を抑制しようとするなら、イランもアラウィの仕切る政府を承認しないだろう。

 色とりどりのイラクの政治家たちは、皆マリキに近い人物だが、3月の選挙のあとに、テヘランに招待された。アラウィはイランから招待されず、その替わりにダマスカス(シリアの首都)とリヤドを訪問して、自分の立場を鮮明にした。

 バグダッドには国民の意志だけがあるのではない。重なりあったり対立したりする利益の数々が何層にもあり、それが次期首相の任免を左右している。国民が望んでいること以上に、イラン、サウジ、シリア、アメリカがイラクに何を求めるかにかかっている。

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