2010年3月27日土曜日

アラウィが連立交渉に着手

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☆★アラウィが連立交渉に着手
Allawi begins Iraq coalition talks
アルジャジーラ(English) 2010年3月27日
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http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2010/03/201032618832513534.html

 イラク国民議会の選挙でマリキ首相を僅差で制したあと、アヤド・アラウィ元首相が連立政府の樹立にむけた交渉を開始した。

 アラウィが率いるイラキーヤ連合は、国民議会の定数325議席のうち91議席を獲得し、他方のマリキ率いる法治国家連合は89議席にとどまった--独立選挙委員会が3月26日(金曜日)に発表した。

 翌27日の記者会見で、アラウィは、「イラク国民に奉仕し、イラクに平和と安定をもたらす決断を下せるように、強い政府を作らなければならない」と語った。

 「何度かの協議を行ってきたが、それはまだ話し合っただけ。交渉は今から始まる」とアラウィは言った。

 現副首相でイラキーヤ連合のメンバーでもあるラファ・アル・イッサウィが、連立与党形成の交渉の責任者に任命された。

 他方のマリキは3月7日に投票されてからの開票結果を受け入れることを拒否し、3月26日夜に選挙委員会から発表された数字は「予備的なもの」(最終確定ではない)と主張した。

 クルド連合は、クルド自治区を長期に支配してきたクルド民主党とクルド愛国同盟の2党で構成されるが、43議席を獲得した。

 アルジャジーラアのニタ・マクノート記者はバグダッドから、アラウィは政府を構成するのが最初の仕事で、議会で163議席以上の多数派を形成しなければならない。

 イラク憲法によると、もしアラウィが30日以内に多数派を形成できないなら、国民議会で選出されるイラク大統領は、連立政府を樹立するよう別の会派の指導者を指名することになる。

 開票結果が発表されたあと、アラウィは連立政府の樹立にむけて、「すべての勢力を協力する」とと約束した。

 しかし、マリキは共同記者会見において、発表された開票結果は「確定されたものではない」として、開票結果の受け入れを拒否した。

 「われわれは手作業で数え直すことを主張する・・・疑いがある以上、今の開票結果を受け入れることはできない」とマリキは言う。

・・・・

 駐イラク米国大使は、選挙結果(開票結果)を支持する声明を発表し、あらゆる政治勢力に協力しあうよう呼びかけた。

2010年のイラク総選挙、最終結果

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☆★2010年のイラク総選挙、最終結果
The 2010 Iraqi Parliamentary Elections
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※開票率100%

 会派     議席  得票率     主な指導者
イラキーヤ   91  28%    アラウィ、ムトラク、ハシミ
法治国家連合  89  27.4%  マリキ、ハサニ、スレイマン
イラク国民連合 70  21.5%  ハキム、ジャファリ、サドル
(INA)
クルド同盟   43  13.2%  バルザニ、タラバニ


※上記は主要会派の獲得議席のみで、マイノリティーに配分される議席、さらに少数会派の獲得議席などは反映されていない。ここに割愛したそれらの数字、および州ごとに各会派が獲得した議席数は、ライラ・アンワルのブログで知ることができる。

↓ライラ・アンワルのブログ/Arab Woman Blues
http://arabwomanblues.blogspot.com/2010/03/iraqs-elections-results.html

2010年3月26日金曜日

正式確定前、最後の中間発表

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☆★イラク総選挙: 正式確定前、最後の中間発表
Last leaked results before the official announcement
Roads to Iraq.com  2010年3月25日
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http://www.roadstoiraq.com/2010/03/25/last-leaked-results-before-the-official-announcement/

 アル・クドス・アル・アラビがリークした後、今日のアラビア語の新聞は全紙が開票結果と議席獲得数を報道した。

 その数字は、オーストラリアの最終統計が届いてない開票率99%段階の数字だと、イラクの少なくとも1紙以上が明らかにした。

 ・イラキーヤ  91議席
 ・法治国家 89議席
 ・INA    71議席
 ・クルド連合  41議席
 ・ゴラン   8議席
 ・IUA    4議席
 ・IK     4議席

 また新聞各紙は、高等選挙委員会の職員39人が、有権者登録のデータベースに間違った名前を記入した件で逮捕された、と報じた。39人は3つの主要会派に有利なように得票結果を操作しようとしたことを認めたが、それ以上のことは発表されていない。

2010年3月25日木曜日

シーア派の主要2会派が合併を協議

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☆★シーア派の主要2会派が合併を協議
Iraq's two main Shi'ite blocs discuss merger
ロイター 2010年3月23日付
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By Suadad al-Salhy
http://ca.reuters.com/article/topNews/idCATRE62M3BV20100323

 バグダッド発

 イラクの2大シーア派会派は、1つはマリキ首相に率いられ、もう1つは指導者がイランと緊密だが、それが合併を協議中で、宗派によるイラク分裂を広げかねない。

 マリキの「法治国家連合」と「イラク国民連合」(INA)は3月7日の選挙で得票が多かった3大会派のうちの2つで、世俗派のアラウィ元首相を脇に追いやるかもしれない。アラウィの宗派横断的な「イラキーヤ」は、少数派のスンニ派から強い支持を勝ちとった。

 合併協議はマリキをも脇に追いやるかもしれないが、本人は2期目を望んでいる。INAを構成する主要勢力の一つはムクタダ・アル・サドルのサドル運動で、これはINAのなかで最も多く票を集めたが、マリキ首相との関係は弱い。

 次期政府のメーキャップは、ワシントン(=アメリカ政府)と国際石油企業によって近くなされると見られているが、ワシントンは9月1日までにイラクでの戦闘作戦を公式に終わらせようと計画し、石油企業はイラクの油田開発に巨額の契約金でサインした。

 マリキの法治国家連合に所属する有力者サミ・アル・アスカリは、同じ会派の別のリーダーが合併を必要とする公式声明を発表した直後に、「両会派の連立ないし合併が結実するまでには、INAとの協議は一回どころではなかった」とロイターに話した。

 法治国家連合は、アラウィの率いる会派とデッドヒートを繰り広げている。どの主要会派も、単独政府を作るのに十分な議席を確保できそうになく、政党あるいは連合会派の間の連立交渉が本格化している。

 最終的な開票結果は選挙から3週間近くたって、26日に公表される予定になっている。

 マリキ政府の報道官をつとめるアリ・アル・ダバグは、「法治国家連合とイラク国民連合は合併する必要がある」と、文書による声明を発表した。

 ◆かつてのパートナー

 マリキと、INAの主要組織であるISCI(イラク・イスラム最高評議会)は、3月7日の選挙前に分裂するまで、もともと連携していたかつてのパートナーである。

 ISCIはシーア派の隣国であるイランで亡命中に結成され、今回の選挙ではサドル運動と同じ連合会派を組んだ。ISCIとサドル運動は、強い結束を装ったが、選挙後に分裂するだろうという憶測があった。

 しかしINAの関係者は、両会派の合併にはサドル運動も含まれるだろうと示唆した。サドル運動は首相としてもマリキには強い異論を持っていることが知られている。

 アル・アスカリは、合併後の首相候補からマリキを外すことは協議してない、と話した。

 しかし、選挙にも立候補したINAのある幹部は、両会派が合併協議を行っていることを認めたうえで、もし法治国家連合がマリキを首相候補に固執するなら連立はありえなかった、と語った。

 彼は、「マリキの首相続投は認められない」と指摘した。「これは既定のコースで、彼(マリキ)がそれを拒否するなら、それもよし。彼はイラキーヤと連立すればいい」。

 法治国家連合とINAの合併の可能性について、イラキーヤの議員候補ジャマル・アル・バティーフは、「有権者の利益をそっちのけで、権力にしがみつきたがる人物がいる」とコメントした。

 「連立を組むのは最大会派に許される当然の権利だが、われわれが優先したいのは国益であって、宗派主義の合従連衡ではない」。

 選挙から16日たって、約95%の開票結果が発表された。アラウィのイラキーヤが約1万1000票、マリキの法治国家連合をリードしている。

 アラウィの会派が5州で首位7に立つのに対し、マリキの会派は18州のうち7州で首位に立っている。国民議会での議席は、全国の得票数によってではなく、それぞれの州ごとに会派の得票によって配分される。

 法治国家連合とイラキーヤは、全325議席のうち90議席以上を確保するものと見られる。アナリストによると、INAは65~70議席程度とされる。

 新しい政府が樹立されるまでには、何ヶ月かかかりそうだ。

 、宗派抗争で何万人もが殺されたあと治安がやっと回復したのに、アラウィを脇に追いやろうとする試みは、スンニ派を政治的に追放して、イラクの治安に再びヒビを入れようとする策動だともわれる。

 アメリカは今年8月までにイラクの駐留兵力を半減させ、2012年までに完全に撤退させる計画である。

選挙では首位を争う陣営が連立を組む可能性

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☆★選挙では首位を争う陣営が連立を組む可能性
Rival front-runners in Iraqi election court possible allies
シアトル・タイムズ 2010年3月23日付
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Seattle Times - Tue Mar 23, 12:16 am ET

http://seattletimes.nwsource.com/html/nationworld/2011414048_iraq23.html?syndication=rss

By KATARINA KRATOVAC
The Associated Press

 バグダッド発 -- イラク総選挙の最終結果が出るのは数日先になるが、22日、首位を走る2つの陣営が他の政治勢力と歩み寄る兆しがあり、次の政権与党を形成するための地ならしが始まったといえる。

 3月7日の選挙に参加したどの会派も、定数325議席の新たな国民議会で単独過半数を得ることはなさそうなので、2つか3つ以上の政党が連立を組むことが必然となっている。

 現在の政府も連立を形成するのに6ヶ月近くかかった。

 開票率が95%になった時点で、マリキ首相と彼の会派はアラウィ前首相の会派とデッドヒートを演じている。どちらの陣営も、連立政府を発足させるには他の会派と手を組む必要がある。

 マリキの法治国家連合に所属する議員が、21日、イラク国民連合(INA)に加わっているかつてのライバルと会談した。INAはイランに後押しされたシーア派の宗教政党であり、イラク南部に根強い支持基盤を持っている。

 ライバル会派に1万1000票という僅差をつけられたとはいえ、マリキの会派はイラク国内18州のうち7州で首位に立っている。アラウィの会派が首位に立つのは5州である。

 議席の分配は州ごとの得票数にもとづき、全国の得票数によるのではないので、今述べたことが重要な意味を持つ。

 シーア派教徒だが世俗派(政教分離主義)でスンニ派アラブ人の支持を集めるアラウィは、21日に北部を訪問し、クルド人勢力と会談した。

 クルド同盟もINAも、彼らが勝利する3つの州で議席を獲得し、交渉の席に着くことになり、未来の政府がどうあれ、キングメーカーとなる可能性を秘めている。

2010年3月23日火曜日

Q&A: イラク総選挙の焦点

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☆★Q&A: イラク選挙の焦点
Q&A: Iraq's election row
アルジャジーラ 2010年3月3日付
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 ※ この記事は3月3日、つまりイラク総選挙の投票(7日)直前に報道されたものだが、最初に取り上げる問題はバース党排除委員会による、立候補禁止措置である。「バース党に関係している」という口実を設けること自体が、これまでのシーア派至上主義者によるテロに同調するもので、世俗主義(政教分離)の政治家やスンニ派の候補、有能なテクノクラートや有識者に対する圧力、あるいは選挙からの排除策動といえる。

 開票の確定結果が発表されるまで時間がありそうなので、今回の選挙を評価する前に、今一度、この問題を振り返っておこう。これまでのところ、投票以後の選挙報道でこの問題を正面切ってとりあげる商業ジャーナリズムはないようだし、各派が選挙の「不正」を主張しているが、「不正」を本気で言うなら、この問題が最優先で取り上げられてもおかしくないと思う。

 もちろんこの記事は、この問題だけをとりあげているのではない。クルドの問題も、キルクークで世俗主義の会派イラキーヤが圧勝している現実から、クルド同盟の主張がほんとうにクルド人ないし共存を望む他の民族の意向を代弁しているのか、冷静に考えてみる契機にすべきだろう。


UPDATED ON:
Wednesday, March 03, 2010
15:50 Mecca time, 12:50 GMT

http://english.aljazeera.net/focus/iraqelection2010/2010/02/20102149181086396.html

 2003年の米軍侵攻以来2度目となるイラク国民議会選挙は、3月7日に予定されている。イラクの高等選挙委員会は325議席を争う6172人の立候補者を承認した。

 しかし511人の立候補者に選挙への参加を禁止した決定は、選挙の信頼性を脅かすもので、イラクの宗派至上主義と民族優先勢力を調停するうえで重大な問題だと指摘されている。

◆排除された立候補者はどのような人物か?

 彼らは公正監査委員会(AJL)のもとで、議会の承認を受けて、バース党排除全国最高委員会によって排除された。

◆彼らが排除された理由は何か?

 彼らが排除されたのは、イラクの元指導者サダム・フセインのバース党につながりがあるからだと言われている。

◆その排斥は取り消されたのか?

 ノー。立候補を禁止された人々は、イラクの最高裁判所に訴える権利を有しており、彼らのうちの177人が立候補禁止の決定に異議を申し立てている。

 最高裁は149人については公正監査委員会の決定を支持したが、28人の立候補者の訴えについてはそれを認めて、その後に彼らの立候補禁止措置を取り消した。

◆511人のうち177人だけが異議を申し立てた理由はなぜか?

 他の人々は、幾つかの理由があって、それぞれの所属する名簿ないし政党によって差し替えられた。

 また彼らのなかにはバース党排除委員会を違法な組織と見なす者もいて、彼らは委員会の正当性を認めたくなくて、訴えることに反対した者もいる。また幾人かは、目標はみずからの政党および連合会派が議席を得ることであり、誰が議員に当選するかは二の次と考えて、他の候補者と入れ替わった。

◆排除された候補者が所属する会派はどこか?

 彼らは主にイラキーヤという連合会派に属していた。アヤド・アラウィ前イラク首相が率いる会派である。その候補者自体はスンニ派あり、シーア派あり、クルド人も交じっていて、世俗主義(政教分離)の政治家を標榜している。

◆選挙への参加を禁じられた候補者のなかで著名な人物は誰か?

 「未来への国民集合」の代表者ダール・アル・アニ、「イラキーヤ名簿」の共同創設者サレハ・アル・ムトラクが、最も有名である。

◆排除された候補者の最高裁判断に対する反応は?

 彼らは最高裁が与党の影響下にあることを非難した。彼らはまた、政府のかかげるイデオロギーと政治スタイルに賛同しない者を排除することによって、政府は民主主義の若芽を潰していると非難した。

◆与党の反応はどうか?

 彼らは最高裁判断を賞賛し、判決に影響力を及ぼしたことはないと述べるとともに、立候補禁止措置は合法的だと主張した。

◆関係政党の反応はどうだったのか?

 イラキーヤは選挙活動を三日間休止して交渉にあたった。彼らは立候補禁止措置の取り消しを要望したのだ。

◆今後どんな展開になるのか?

 イラキーヤは、「選挙を前に適切な民主的雰囲気を作りだす」ために、禁止措置の取り消し大統領会議に求めた。イラキーヤは連邦裁判所に立候補禁止措置の撤回を訴える準備を整えた。

 しかし、選挙への参加を禁止された著名な政治家であるサレハ・アル・ムトラクが3月7日の選挙に出ないことを発表するにいたって、そうした努力は失敗に終わった。

 ムトラクの所属政党はイラキーヤに加盟しており、イラキーヤはアラウィ前首相が代表を務める宗派横断の連合会派である。アラウィは再び首相になる野望を持ったシーア派の世俗主義政治家である。

 イラキーヤは、一部の加盟者がボイコットしても、選挙には参加するつもりだと宣言した。

 現在、多くのイラク人は、宗派・民族間の緊張が高まれば、この2年間の治安改善も失われかねないと感じている。

◆それは政権交替が平和的に行われないという意味だろうか?

 選択肢は対照的な道である。シーア派が率いる政府のもとで、信仰に助けを求めるかどうかは、イラクの1890万人の有権者が決めるだろう。

 それは、イランが後押しするイラク・イスラム最高評議会と並んで、ムクタダ・サドルの支持者らが参加するイラク国民連合(INA)のもとで、隣国イランともっと親密な関係を築くことを意味する。

 イラクはほかに、イラキーヤとともに進む道を選ぶことも可能である。イラキーヤは、世俗主義のシーア派教徒で、イラク社会内に働きかけているアラウィ前首相が率いている。

◆マリキの法治国家連合だとどうか?

 おそらく幾分は中間的なものだろう。マリキは2006年に妥協を選んで生き残り、自らをナショナリストだと演出し、宗派横断の政治路線で国を安定させるといって地歩を築いた。

 しかしバグダッドで政府その他のビルが爆弾攻撃の標的にされる事件が相次いだために、彼の治安回復策は地に墜(お)ちた。これに対して、彼は繰り返し事件をサダムのバース党員の仕業だと非難し、それはイラクのアルカイダと結びついているとデッチアゲることで、宗派主義的な緊張を高めてきた。

◆選挙はイラクに住むクルド人にとって転換点となりうるか?

 キルクークでの得票がどのように配分されるかの議論が、アラブにとってもクルドにとっても焦点になっており、そのせいで選挙の実施が1月から3月に延期された。

 イラク北部の3つの州で自治を行っているクルド人は、サダムによってキルクークから追われた。クルドはシリアからイランにあたがる広い領土を支配しようとしている。

 同盟者としてアメリカに信頼されてきた少数民族にとって、今回の選挙は大きなステップとなる可能性はある。

 しかし、何年も抗争が続いた今、多くのイラク人と共に今回の選挙にかける夢と希望は、安心して暮らせる国がほしいという点にいっそう絞られてきている。

開票率95.10% & イラク総選挙のシステム

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☆★開票率95.10%、アラウィ陣営が再びリード
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http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/tight_contest.html

 開票率95.10%での各派・陣営の得票数を更新しました。(上記URL)
 アラウィが率いる世俗派のイラキーヤが、再び、わずかながらマリキ首相率いる法治国家連合をリードしました。

 ◆マリキ率いる法治国家連合 2,620,042
 ◆アラウィ率いるイラキーヤ  2,631,388


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☆★イラク総選挙のシステム
How Iraq's electoral system works
アルジャジーラ 2010年3月22日付
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http://english.aljazeera.net/focus/iraqelection2010/2010/03/20103228644280828.html

Monday, March 22, 2010
12:55 Mecca time, 09:55 GMT

 3月7日に投票されたイラク総選挙は、イラクに民主主義がもたらされるという触れこみで行われたが、そのシステムそのものがひじょうに複雑である。

 アルジャジーラは2010年イラクの選挙の経過を見てみた。

◆イラク国民議会の定数は何議席なのか?

 2005年の選挙法(2009年改正)によると、イラク国民議会の議席数は、275議席から325議席に増やされた。

◆候補者はどうすれば国民議会に議席を獲得できるのか?

 議席を獲得するには、候補者ないし候補者名簿(=提出会派)は、投票数を定数で割った数以上を得票しなければならない。

 例えば、定数10の州で投票数1万の場合、候補者または名簿提出会派が議席を得るには、1000以上を得票しなければならない。

◆組閣するには何議席が必要なのか?

 組閣できる政党は163議席以上が必要だが、比例代表システムを採用していることから、どの政党も単独ではそれだけの議席数を得ることができず、一時的な連立が期待される。

◆2010年の選挙は2005年の選挙とどこが違うのか?

 主な違いは、2005年の選挙では名簿が閉鎖式となっていて、つまり有権者は名簿に掲載された政党を知っていても、個別の候補者を知ることはなかった。

 2010年の選挙では公開名簿方式が採用され、有権者は自分たちが投票する名簿の中に候補者の名前と人物像を知ることになる。

 公開名簿方式では、有権者は名簿にあげられた候補者を自分で選ぶことができる。

◆女性候補に割り当てられた議席があるのか?

 その通り。女性の代表はイラク国民議会の325議席のうちの25%(4分の一)を占めなければならず、つまり82議席が女性ということになる。

◆議席はどのように配分されるのか?

 総定数325議席のうち310議席は、人口比によってイラクの全18州に割り当てられる。

 また8議席が少数派マイノリティー(訳注:キリスト教徒など)に当てられ、7議席が「補償議席」とされる。

◆補償議席とはどんなもものか?

 補償議席は全国で勝利した議席に応じて、勝った名簿提出者に与えられる。

 勝利した名簿提出者の補償議席は、落選した者のなかから、その名簿のなかで最高の個人得票を得たものに与えられる。

◆2010年に投票資格を持つイラク人は何人か?

 国内の有権者は約1890万人で、9万7000人が国外で登録されている。

◆国外で投票するには何カ所の投票補があるのか?

 国外にいるイラク人は、次の16ヶ国で投票することができた。オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、エジプト、イラン、ヨルダン、レバノン、オランダ、スウェーデン、シリア、トルコ、UAE、イギリス、アメリカ。

2010年3月21日日曜日

イラク人は「侵略7周年」より選挙結果に関心

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☆★イラク国民は「侵略7周年」に無関心
Iraqis indifferent over anniversary
アルジャジーラ 2010年3月21日付
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http://english.aljazeera.net/focus/2010/03/2010320203027372891.html

 イラク国民はアメリカが自国に侵攻して7周年を迎えたが、多くの者が完全に無関心であった。ある地方テレビ局、バビロンTVにいたっては、「8周年」と報じたほどである。言い間違いではあろうが、この国では米軍の駐留がもはや当たり前となっていることを示唆している。

 3月7日に投票された総選挙の開票が続いており、毎日、高等選挙委員会から接戦が発表されるなかで、イラク国民はもっぱらその方に関心を寄せている。

 (総得票数で)優位に立つ陣営は既に2度も入れ替わり、マリキ首相の率いる法治国家連合とアラウィのイラキーヤが、最多議席の獲得をめぐって争っている。しかし排他的なシーア至上主義のイラク国民連合は、大きく遅れをとっている。

 ・・・

 選挙の前と選挙の後にアルジャジーラが取材したイラク人は、自分たちの国が宗派主義と政治的争いを乗り越えて進んでほしいと熱く語った。しかし遅まきながら投票結果反映されだした政治地図からは、国がまだ民族と宗派によって投票していることが読み取れる。

 シーア派勢力への投票はバグダッドのシーア派居住地区とイラク南部で多く、スンニ派及び世俗派への投票はイラク西部と北部にかけての地域に集中し、北部ではクルド政党への票も多かった。

 どの勢力も単独では支配的な地位を獲得できず、与党を形成するためには複数政党間の交渉と妥協が必要になるだろう。バグダッドやバクーバで甚大なテロがあったにもかかわらず、投票に出向いたイラク人が最も懸念しているのは、この点である。

 2005年に行われた第1回の総選挙以後に登場した政治家や国会議員たちには、こえまでの民主的プロセスでひどく失望させられた。そして政治空白は治安のためにも良くない。

 マリキはキャンペーンを強めているが、南部とバグダッドで治安の改善は遅れている。電気と水道の供給は遅いながらも改善されつつあるが、イラクはまだ人々が必要とする基本的インフラストラクチャーが不足している。

 イラクはまだ中央省庁を運営する実務的テクノクラートが少ないし、政府の以後とはいまだに政治的な依怙贔屓(えこひいき)で恩賞が出されたりしている。

 また国際難民支援会(Refugees International )は今週報告書を発表したが、イラクにはまだ国内避難民が150万人いると指摘している。そのうち50万人は清貧のなかに放置された暮らしをしている。今のままでは、イラク政府は彼らの状況を改善するのに数年かかるだろう。

 アメリカ政府から外に出て、イラクの7年を距離を置いて見ることができるようにコンドリーザ・ライス(元国務長官)は、3月19日、アメリカも間違いを犯したと語った。

 「イラクが社会としてどれほど破壊されたかを私たちは理解できず、バグダッドから外にむかってイラクを再建しようとした。しかし本当は、バグダッドの外側から中に向かって再建すべきだった」とライスは香港の大学で演説した。「部族民とともに働くべきだった。地方の州とともに働くべきだった。われわれが手がけた大きなプロジェクトではなく、もっと小さなプロジェクトから手がけるべきだった」。

 米軍当局は、イラク撤退計画は政治動向に左右されないと述べ、予定通り8月に戦闘部隊を撤退させると語った。

 戦闘部隊の一部は、訓練要員として再編されて残るが、米軍の地位協定に決められた撤退期限の後に、どれだけの兵力が残されるかは不明である。

2010年3月19日金曜日

接戦のため選挙後が見通せず

▼アラウィとマリキが合意に、サウジはアラウィに期待
Allawi and Maliki reached an agreement, Saudi Arabia asked Allawi to accept any deal
Roads to Iraq 2010年3月17日付

http://www.roadstoiraq.com/2010/03/17/allawi-and-maliki-reached-an-agreement-saudi-arabia-asked-allawi-to-accept-any-deal/

 シリアはイランのアフマディネジャド大統領に対し、マリキが首相として2度目の任期に就くことを禁じるよう要請し、それは4ヶ国(シリア、サウジアラビア、エジプト、トルコ)の意向だと説明した。

 この話は明日ないしそれ以後に広がるだろう。3つの主要会派であるイラキーヤ、イラク国民連合(シーア至上主義)、法治国家連合が相談した後、アラウィに近い情報筋は、アラウィを次期首相に任命することで3会派が合意し、マリキには副大統領あるいはマリキ自身が望む他のポストを用意する、と明らかにした。

・・・(略)


▼マリキが勝利しても首相再登板は難しい
Even if he wins, Maliki may be out as Iraq's prime minister
McClatchy 2010年3月17日(米東部時間)

http://www.mcclatchydc.com/2010/03/17/90584/even-with-voter-support-maliki.html#ixzz0ibcGGVrA

 (略) 今や、世俗派(政教分離)のライバルであるアラウィ元首相に追い詰められ、マリキが首相に再選される機会は疑わしくなっている。

 マリキはもはや多数派ではなく、指導力もなく、連合会派のなかでの支持もひどく少なくなった。マリキの同調者や不満派および中間派にインタビューをおこなっても、法治国家連合のなかでも、彼を首相候補にして連立の道を模索する者はいない。



▼接戦のなかで政治生命を賭けるイラク首相
Iraqi PM fights for survival as votes are counted
AP 2010年3月17日(米東部時間)

http://news.yahoo.com/s/ap/20100318/ap_on_re_mi_ea/ml_iraq_121

 バグダッド発 (略)  国民議会選挙は約83%が開票されたものの、世俗派の挑戦者アラウィが驚くべき強さを発揮していることから、マリキ首相が勝利者になるかどうかは不透明だ。

イラク首相、得票数で首位に戻る

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☆★イラク首相、得票数で首位に戻る
Iraq PM back in lead in vote count
アルジャジーラ・イングリッシュ 2010年3月18日付
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http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2010/03/201031883129107624.html

 マリキ首相が率いる連合会派は、国民議会選挙の中間集計(84.2%)において、わずかながらアラウィ氏の率いる連合会派をリードした。3月7日の投票から続いている集計によると、マリキ陣営の法治国家連合(SOL)が、アラウィ陣営のイラキーヤを約4万票上回った。

 アルジャジーラの記者アニタ・マクノートによるバグダッドからのレポートは、3月18日、84.2%が開票されたと伝えた。

その最新の集計では、マリキの法治国家連合が226万483票、イラキーヤが222万443票となった。バスラ、カルバラ、ディカルなどシーア派の多い南部の州から新たな集計が届いた。

 3月16日段階では、アラウィ陣営が、全体の得票数で9000票、首相陣営をリードした。しかし、州ごとの集計では、マリキが終始リードしており、イラクの18の州のうち、アラウィ陣営が5州で優勢なのに対し、マリキ陣営は7州で優勢に立っている。

 国民議会の議席は、全体の得票数ではなく、州ごとにどの会派(連合会派)が優位でるかによって割り振られる。

 アラウィが集めたスンニ派の支持は、彼の特定宗派に片寄らない姿勢と、シーア派の隣国イランの影響を非難してきたことによる。

開票率 89.65%/マリキ陣営が再び世俗派を上回る

※マリキ陣営が得票数で再び世俗派を上回る

   マリキ/法治国家連合    2,448,452 (得票総数)
   アラウィ/イラキーヤ     2,408,547 ( 同 )
   宗派主義/イラク国民連合 1,859,606 ( 同 )

     (イラク国内の開票率 89.65% )

2010年3月17日水曜日

開票約80%:州ごとの各派得票数

開票約80%:州ごとの各派得票数をメイン・サイトに掲載しました。
アルジャジーラ(英語版)3月16日付より転載したもの。

URLは次

http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/tight_contest.html

得票数では世俗派が首相陣営を上回る

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☆★全得票数では挑戦者が首相を上回る
Challenger overtakes Iraqi leader in vote total
Statesman.com(ステーツマン) 2010年3月16日
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http://www.statesman.com/news/world/challenger-overtakes-iraqi-leader-in-vote-total-374650.html?cxtype=ynews_rss

By Qassim Abdul-Zahra and Ben Hubbard
ASSOCIATED PRESS

 バグダッド発 -- イラクの歴史的選挙でマリキ首相に挑戦している世俗派(政教分離主義)が、州ごとの集計ではまだ接戦が続いているものの、全得票数で初めてわずかに上回った。

 アラウィ前首相に率いられる世俗派のイラキーヤは、16日に発表された新たな中間集計によると、全国で9000票をリードし、優勢に立ちつつあるように見える。しかし3月7日に投票されてから、まだ投票数の20%が開票作業中であり、この数字がアラウィ陣営に議会での多数派を与えることになるかどうか、つまり誰が政府を率いるようになるかは不明である。

 マリキ首相は自らの率いる法治国家連合が劣勢になるのを見て、選挙委員会が開票作業で不正を行ったと非難し、数え直しを要求した。首相が選挙結果に異議を唱えるのは今回が初めてで、マリキ陣営は非難の矛先をアラウィにも向けている。

 マリキ首相の申し立ては高等選挙委員会に宛てた彼の書簡で明らかになったが、集計センターの責任者ハジム・アル・バドリを名指して、彼はアラウィを支持するスンニ派グループのメンバーだというもの。

 西側諸国の外交官と国連の当事者は、(マリキ首相による)不正の訴えをささいな「変則」として却下し、選挙結果を変えることはないと述べた。

 開票率79%で、マリキの連合会派はまだ18州のうちバグダッドを含む7州で勝っており、アラウィの会派が勝っているのは5州である。国民議会の議席は、全得票数に応じてではなく、州ごとに多数を占めた会派に割り振られる。

 また今回の中間発表でも、シーア派の宗教政党イラク国民連合とクルド同盟がそれぞれ3州で優位に立っていることは変わってない。

マリキ首相派が選挙の不正を訴える

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☆★マリキ首相派が選挙の不正を訴える
Iraqi PM's bloc accuses election official of fraud
AP通信 2010年3月16日(米東部時間)
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http://news.yahoo.com/s/ap/20100316/ap_on_re_mi_ea/ml_iraq_106

By Associated Press Writers

 バグダッド発 -- イラクのマリキ首相が率いる連合会派(法治国家連合)は、選挙委員会職員が国民議会選挙の開票作業を人為的に操作したと非難し、票の数え直しを要求した。法治国家連合の候補者の一人が16日に語った。

 既に開票作業の混乱や遅れが指摘され、不正があったとの非難も出されていたが、3月7日の選挙が無効と訴えられたのは初めてである。またマリキ首相が開票作業を非難したのも、今回が初めて。

2010年3月15日月曜日

イラク: 女性たちはサダムを慕う

日本語訳とメール配信
2010/03/15

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☆★イラク: 女性たちはサダムを慕う IRAQ: Women Miss Saddam
ダール・ジャマイルの中東速報 2010年3月12日付
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** Dahr Jamail's MidEast Dispatches **
** Visit Dahr Jamail's website http://dahrjamailiraq.com **

By Abdu Rahmanand Dahr Jamail*

 バグダッド発、2010年3月12日(IPS)

 サダム・フセインの統治下では、政府機関で働く女性たちは1年の出産休暇をとっていたが、今では6ヶ月に短縮された。イラク人がイギリスの支配を打ち倒した1958年7月14日以後、軍隊内の兵士の身分を保障する法律では、イラク人女性は西側諸国の女性が持っている権利のほとんどを有していた。

 イラクで女性の権利を求めるキャンペーンに参加しているヤナル・モハメッドは、「アメリカの占領が女性の権利を失う決め手になった」と指摘する。「政治的イスラムを掲げるグループがイラク南部を支配するようになって、政治権力を完全に掌握し、イランから資金援助を受けて新兵や仲間を募集している。イランからの資金援助と政治的支援がその背景にあり、イラク国民がイスラム法を求めているのではない」。

 新しい法律(イスラム法)が新たな無法状態をもたらした。ノラ・ハミド(30歳、バグダッド大学卒)は、夢見ていたキャリアを今では諦めてしまった。「侵略者たちがやって来る前に私が学業を終えたのは、当時は治安状態もよく、自由に大学に行くことができたからだ」と、ハミドはIPSの取材に語った。

 今、彼女は自由に出回ることもできず、毎日、子どものことが心配だと言う。「それはもう毎日のことで、子どもたちが家を出て、学校から戻ってくるまでのあいだじゅう、誘拐されるのじゃないかと恐れている」。 国民議会では女性議員が25%を占めているが、「その女性たちは政党の候補者名簿で選ばれていて、議会ではその政党を守るために働き、女性の権利を守るためではない」とサブリアは言う。イラクの女性にとって侵略は過去のことではない。

 女性たちが置かれている状況は、イラクの全般状況を反映している。つまり誰もが守られなくなり、社会基盤も失われてしまった。

 「この地に住む女性の地位は、世代が置かれた状況と関連している」とマハ・サブリアはIPSに話した。彼女はバグダッドにあるアル・ナーレイン大学(バグダッド)で政治学教授をしている。「女性の権利が侵害されるのは、全イラク国民の権利が侵害されている一環である。私たちは占領下で多くの自由を奪われたので、女性は占領下にあっては二重の苦しみに耐えている」。

 「現在、多くの男性が拘束されていて、家族にふりかかる厄介事の全部が女性にかぶさり、家族と子どもへの全面的支援がなされてしかるべきである。そのうえ、治安状況が悪化し、犯罪者による女性と子どもの誘拐が原因で、女性たちは移動の自由を奪われている」。 さらにサブリアの話では、夫がいれば安全が守られるという家族の期待から、女性たちは結婚するようプレッシャーをかけられている。

 サブリアはIPSに対して、女性の誘拐事件は「占領という事態より先にあるのではない」と指摘した。「私たちは次のように認識している。女性たちが学ぶ権利を失い、自由に正常な生活を送る権利を失ったゆえに、イラクの女性たちはこれまで以上に、女性の権利の否定論および抑圧とたたかうことになった」。

 ヤナル・モハメドは、憲法は女性を守ることも、その基本的権利を擁護することもない、と考えている。イラクにおける多元的民主主義の発展を促す責任を、アメリカが放棄していると彼女は非難する。

 サブリアは、「今のイラクは、古い慣習や部族的あるいは未開の仕来りで支配されている」と指摘する。「最大の問題は、今日のイラク社会では遅れと無知が一般的状況となったために、イラクでは自分たちの権利を知らない女性が多くなったことね」。

 多くの女性たちが国外に逃れたのは、彼女たちの夫が占領軍や政府の治安部隊によって一方的に拘束されたからだ、と、サブリアは言った。

 アメリカによって占領された期間に、約280万人の国内難民も含めて、400万人以上のイラク人がそれまでの居住地から移住を余儀なくされた。そのうちの多くの者が難民となって近隣諸国で生活している--ブルッキングス研究所の理事であるエリザベス・フェリスはそう語る。 『帰郷? イラク人の大量帰国の展望と危うさ』と題された報告書は、移住したイラク人のほとんどが今も続く不安定を理由に帰国を嫌がっていると書いている。

 ワシントンに本拠地を置くRefugees International (R I )は、『イラク人難民』 という報告書で、「たとえイラク情勢が改善されても、もし女性の権利が確保されず、個人の安全と家族の幸福が保障されないのであれば、イラク人女性は帰郷することに反対するだろう」と指摘する。

 R I のこの報告書は、北部のクルド準自治区に国内移住したイラク人女性とシリアへの女性避難民をとりあげている。報告書は、「私たちが面会取材したなかで、帰国したい意向を示したのは一人ではない」という。

 イラク北部に移住したある女性は、R I の取材に、「このテントはバグダッドの宮殿よりも心地よい。ここでは家族が安全なのよ」と話した。

 35歳のある政府職員は、IPSの取材に、「私は単なる職員で、毎日職場に行く。私の最大の冒険であり全イラク人が体験している冒険というのは、道路が閉鎖され、自分が何の権利も持たないチッポケな存在だと感じるときね」と語った。

 彼女は、「身の回りの状況が幾らかでも安心できるようになったかしら?」と問いかけた。「給料は今の方が良くなったけど、安全が保障されない状況で女性がどうやって暮らせるの? 安全にでかける場所がなく、くつろげる所がなく、住む所もないのなら、女性の権利を満喫することもできないでしょう?」

(*Abdu, our correspondent in Baghdad, works in close collaboration withDahr Jamail, our U.S.-based specialist writer on Iraq who reportsextensively on the region)

バース党員へのパージが地方にも波及

※この記事はイラクで国民議会選挙の投票が行われる前のものだが、イラクの現況を知るうえで重要なので、遅ればせながら紹介する。

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☆★バース党員へのパージが地方にも波及
Baathist purge in Iraq goes local
UPI 2010年2月23日付
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http://www.upi.com/Top_News/Special/2010/02/23/Baathist-purge-in-Iraq-goes-local/UPI-56141266939811/

Special Reports
Published: Feb. 23, 2010 at 10:43 AM

 バグダッド発、2月23日(UPI)

 イラクの国民議会選挙を控えて、政局を不安定にさせるバース党粛正の動きは、地方の州レベルにまで波及してきた--政府高官が語った。

 かつてワシントン(=米国政府)のお気に入りだったアハメド・チャラビが率いる公正監査委員会(JAC)は、さる1月、影響力の強いスンニ派の指導者数人が3月の選挙に参加することを禁じたが、それはサダム・フセインのバース党と接触があるという口実を理由にしていた。

 世俗派(政教分離主義)のシーア派教徒で、1950年代以降にはバース党員だったことのあるアラウィ副大統領は、チャラビの流儀はサダム時代の強硬戦術と変わるところがない、と非難した。

 イラクの評論サイトであるニカシュのレポートによると、バグダッドの地方議員であるカメル・アル・ザイディは、バース党との接触を疑われて、秘書がJACの地方組織から調査されていると話した。

 「委員会は悪事を告発されたバース党員に対する立件材料を集め、そうしたバース党員を有罪にするための証拠を提出するのだろう」とザイディは批判した。

 イラク国内でのバース党粛正の感情は、昨年、バグダッド中心部で一連の爆発事件が発生したとき、マリキ首相がダマスカスに住むバース党信奉者の仕業だとこじつけたことから、一気にエスカレートした。

 シーア派の多いイラク南部では、州の行政機構からバース党員を排除しようと、地方議員たちが公務員たちの記録を調べはじめた。

 イラクの政府当局者はこれは国内問題だと説明しているが、ワシントン(米国政府)は、イラクにおけるイランの影響力が大きくなっている徴候として、このバース党粛正の動きに関心を持っている。