2010年3月15日月曜日

イラク: 女性たちはサダムを慕う

日本語訳とメール配信
2010/03/15

--------------------------------------------------------------------
☆★イラク: 女性たちはサダムを慕う IRAQ: Women Miss Saddam
ダール・ジャマイルの中東速報 2010年3月12日付
--------------------------------------------------------------------

** Dahr Jamail's MidEast Dispatches **
** Visit Dahr Jamail's website http://dahrjamailiraq.com **

By Abdu Rahmanand Dahr Jamail*

 バグダッド発、2010年3月12日(IPS)

 サダム・フセインの統治下では、政府機関で働く女性たちは1年の出産休暇をとっていたが、今では6ヶ月に短縮された。イラク人がイギリスの支配を打ち倒した1958年7月14日以後、軍隊内の兵士の身分を保障する法律では、イラク人女性は西側諸国の女性が持っている権利のほとんどを有していた。

 イラクで女性の権利を求めるキャンペーンに参加しているヤナル・モハメッドは、「アメリカの占領が女性の権利を失う決め手になった」と指摘する。「政治的イスラムを掲げるグループがイラク南部を支配するようになって、政治権力を完全に掌握し、イランから資金援助を受けて新兵や仲間を募集している。イランからの資金援助と政治的支援がその背景にあり、イラク国民がイスラム法を求めているのではない」。

 新しい法律(イスラム法)が新たな無法状態をもたらした。ノラ・ハミド(30歳、バグダッド大学卒)は、夢見ていたキャリアを今では諦めてしまった。「侵略者たちがやって来る前に私が学業を終えたのは、当時は治安状態もよく、自由に大学に行くことができたからだ」と、ハミドはIPSの取材に語った。

 今、彼女は自由に出回ることもできず、毎日、子どものことが心配だと言う。「それはもう毎日のことで、子どもたちが家を出て、学校から戻ってくるまでのあいだじゅう、誘拐されるのじゃないかと恐れている」。 国民議会では女性議員が25%を占めているが、「その女性たちは政党の候補者名簿で選ばれていて、議会ではその政党を守るために働き、女性の権利を守るためではない」とサブリアは言う。イラクの女性にとって侵略は過去のことではない。

 女性たちが置かれている状況は、イラクの全般状況を反映している。つまり誰もが守られなくなり、社会基盤も失われてしまった。

 「この地に住む女性の地位は、世代が置かれた状況と関連している」とマハ・サブリアはIPSに話した。彼女はバグダッドにあるアル・ナーレイン大学(バグダッド)で政治学教授をしている。「女性の権利が侵害されるのは、全イラク国民の権利が侵害されている一環である。私たちは占領下で多くの自由を奪われたので、女性は占領下にあっては二重の苦しみに耐えている」。

 「現在、多くの男性が拘束されていて、家族にふりかかる厄介事の全部が女性にかぶさり、家族と子どもへの全面的支援がなされてしかるべきである。そのうえ、治安状況が悪化し、犯罪者による女性と子どもの誘拐が原因で、女性たちは移動の自由を奪われている」。 さらにサブリアの話では、夫がいれば安全が守られるという家族の期待から、女性たちは結婚するようプレッシャーをかけられている。

 サブリアはIPSに対して、女性の誘拐事件は「占領という事態より先にあるのではない」と指摘した。「私たちは次のように認識している。女性たちが学ぶ権利を失い、自由に正常な生活を送る権利を失ったゆえに、イラクの女性たちはこれまで以上に、女性の権利の否定論および抑圧とたたかうことになった」。

 ヤナル・モハメドは、憲法は女性を守ることも、その基本的権利を擁護することもない、と考えている。イラクにおける多元的民主主義の発展を促す責任を、アメリカが放棄していると彼女は非難する。

 サブリアは、「今のイラクは、古い慣習や部族的あるいは未開の仕来りで支配されている」と指摘する。「最大の問題は、今日のイラク社会では遅れと無知が一般的状況となったために、イラクでは自分たちの権利を知らない女性が多くなったことね」。

 多くの女性たちが国外に逃れたのは、彼女たちの夫が占領軍や政府の治安部隊によって一方的に拘束されたからだ、と、サブリアは言った。

 アメリカによって占領された期間に、約280万人の国内難民も含めて、400万人以上のイラク人がそれまでの居住地から移住を余儀なくされた。そのうちの多くの者が難民となって近隣諸国で生活している--ブルッキングス研究所の理事であるエリザベス・フェリスはそう語る。 『帰郷? イラク人の大量帰国の展望と危うさ』と題された報告書は、移住したイラク人のほとんどが今も続く不安定を理由に帰国を嫌がっていると書いている。

 ワシントンに本拠地を置くRefugees International (R I )は、『イラク人難民』 という報告書で、「たとえイラク情勢が改善されても、もし女性の権利が確保されず、個人の安全と家族の幸福が保障されないのであれば、イラク人女性は帰郷することに反対するだろう」と指摘する。

 R I のこの報告書は、北部のクルド準自治区に国内移住したイラク人女性とシリアへの女性避難民をとりあげている。報告書は、「私たちが面会取材したなかで、帰国したい意向を示したのは一人ではない」という。

 イラク北部に移住したある女性は、R I の取材に、「このテントはバグダッドの宮殿よりも心地よい。ここでは家族が安全なのよ」と話した。

 35歳のある政府職員は、IPSの取材に、「私は単なる職員で、毎日職場に行く。私の最大の冒険であり全イラク人が体験している冒険というのは、道路が閉鎖され、自分が何の権利も持たないチッポケな存在だと感じるときね」と語った。

 彼女は、「身の回りの状況が幾らかでも安心できるようになったかしら?」と問いかけた。「給料は今の方が良くなったけど、安全が保障されない状況で女性がどうやって暮らせるの? 安全にでかける場所がなく、くつろげる所がなく、住む所もないのなら、女性の権利を満喫することもできないでしょう?」

(*Abdu, our correspondent in Baghdad, works in close collaboration withDahr Jamail, our U.S.-based specialist writer on Iraq who reportsextensively on the region)

0 件のコメント:

コメントを投稿