2011年4月18日月曜日

放射能に汚染された地域

 福島第一原発の事故レベルが、史上最悪の原発事故と言われてきたチェルノブイリ原発事故と同じ、「レベル7」に修正された。ここに訳出した記事は、それよりも前、4月9日に発表されたものだが、諸般の事情で、訳すのに時間がかかってしまった。

 海外のジャーナリストや原子力の専門家が、福島原発事故をどのように見ているか、日本の報道とはちょっと違った視点を紹介する。この記事の筆者は、イラク問題でも多くのレポートを紹介してきたダール・ジャマイル。

 なお後半部分はアメリカの原発政策や、日本の原発にありがちな同一施設内に幾つもの原子炉を設置することの問題性にも言及している。これらも大事なのだが、深刻な問題であるだけに、普段以上に慎重さと集中力が必要で、時間もかかるために割愛した。

 今回はイラク問題ではないが、皆さんも関心が強いと思い、番外編。と言っても、全くの別問題だとは思っていない。放射能の問題はイラクでも重大問題であり、劣化ウランの製造過程は原発と不可分のことでもある。

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☆★福島: 「放射能に汚染された地域」
Fukushima: A 'nuclear sacrifice zone'
by Dahr Jamail /AlJazeera English 2011年4月8日付 
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http://english.aljazeera.net/indepth/features/2011/04/20114812554680215.html

08 Apr 2011 15:37

 日本の福島第一原発は、3月11日に発生したマグニチュード9の大地震後の津波によって損壊したが、ひじょうに高レベルの放射線を太平洋と土壌、そして大気中に拡散し続けている。

 福島原発を運転している東京電力は、4月5日、放射性ヨウ素131は第2号機の取水口近くの海面から検出され、法的規制値の750万倍以上であった、と発表した。この時検出されたサンプルは、東京電力が1万1000トン以上の放射能汚染水を海に放出する直前に採取されたものである。

 放射能を含んで太平洋に放水された水は、ヨウ素よりもはるかに半減期の長いセシウムが食物連鎖で濃縮される恐れがあり、専門家は警告を発している。

 プリンストン大学の科学及び世界安全保障プログラム(PSGS)で核の安全保障を専門とする物理学者MVラマナ博士は、アル・ジャジーラの取材に、「事態を安定させるのは非常に難しいと見られている」と語った。

 燃料棒が高温のままで、高レベルの放射線が放出され続けているために、原発の運転作業員は損傷した原子炉をコントロールできないでいる。

 発電所内の冷却システムが再稼働するまで、放射線は発電所から漏れ出るであろう。

 原子力保安院の西山英彦広報担当は、4月3日、核危機を収束させるのにどの程度の期間がかかるか所感を述べた。

 「最終的に事態を制御し、将来的な見通しを持てるようになるまで、数ヶ月かかるだろうが、しかしそれで終わりというのではない。」

 ラマナ博士は、「風は海向かって吹くことが多く、その後は大きな爆発は起こってなく、使用済み燃料はどれも発火してない」ので、現在の状況は「良い方へ向いている」とアルジャジーラに説明した。

 ◆最悪の展開の場合

 最悪の展開だとどうなるかについて、「炉心溶融、あるいは爆発もありうる」と彼は見ており、「好ましいことではないが、可能性はある」という。

 メアリー・オルソン女史は、原子力情報資料サービス(NIRS)の東南事務所長で、NIRSは原子力発電所および放射性廃棄物そして放射線に関心を持つ市民および環境団体にむけて、情報提供とネットワークのセンターとなっている。

 オルソン女史は最悪のシナリオについて、ラマナ博士と同じ問題意識を持っている。

 「最悪のシナリオはまだ起こってないが、可能性は残る」と、オルソン女史はアルジャジーラに語った。「その場合(最悪の場合)、原発内の放射性物質を広い範囲にまき散らすような、何らかの爆発が起こる」。

 オルソン女史は、科学史と生物学を専攻する生物学者で、パデュー大学で化学および生化学を研究しており、アメリカのスリーマイル原発事故の影響に関心を持ってきた。「そこで生成された汚染物質は、すべて、計画的に規制された方法で環境に放出された。川に捨てたり、大気中に蒸発させた。」

 オルソン女史は、それと同じことが福島原発事故で今すでに起こっているのを目にし、事態はチェルノブイリ原発事故よりも悪くなるかもしれない、と考えている。環境保護グループの調査によると、チェルノブイリでは20万人が死亡した。

 福島原発の原子炉は、放射線の放出は破滅的レベルになっており、チェルノブイリを上回っている」と彼女は言う。「その内の2機は爆発し、2号炉はメルトダウンした。臨界に達したこともあり、核分裂の連鎖が起こったり、止まったりしていると思われる」。

 彼女はさらに、4号炉内の核燃料は、地震と津波の発生時には、原子炉から抜かれていたことを指摘した。 「核燃料は一つも封印されてなく、全部が(一次)冷却プール内にあったが、それが急速に温度上昇した理由であり、ほとんど注意が払われなかった理由でもある。このこと自体がとんでもないことで、1ヶ月も同じ場所に置いていると、ほんとうに破滅する。」

※訳者註: 上の部分、次のURLページを参照
http://www.es-inc.jp/news/001967.html
ニューヨークタイムズ3月17日
「危険が大きいのは原子炉よりも使用済み燃料」より

 ◆永久の禁令

 危機的状態から脱却するまでには、途中に何もなくても、数ヶ月は要するだろう、とラマナ博士は警告した。

 「膨大なシステムが津波と爆発で損傷しているのを見た」と彼は言う。「冷却水を循環させる電源が失われたのが問題で、事態をすぐに安定させる方策はなさそうだ」。

 オルソン女史も、もしメルトダウンした炉心が発電所の地下の水に触れると、「施設の真下で大きな爆発が発生する」と恐れている。「問題は、解けた燃料が水に触れると、蒸気爆発を起こすということだ」。

 「2号機は核分裂の兆候を見せているので、さらに破滅的なできごとが、ここで起こる可能性が増大している」とオルソン女史は言う。「人々は最悪の事態が回避できたように振る舞っているが、放射線の影響という本当の問題は理解されていない。」

 彼女はさらに、「最近の写真によると、3号炉の燃料プールが破損している」ことを指摘し、「燃料がどこにもない。3号炉内の燃料プールが失われている。どこに行ったのか?」と語った。

 4月7日には枝野官房長官が、現在(7日時点)の20キロの避難指示範囲は、短期間の被ばく線量から算定されたもので、もっと拡大される必要がありそうだ、と発表した。

 50ミリシーベルトという被ばく線量は、原発内労働者が1年間に浴びる制限値である。

 「日本政府が避難を指示した地域は長期にわたるもので、数百平方キロに及ぶが、その外側にも部分的なホットスポットが見つかっている」とラマナ博士は話した。福島原発の周辺にも、何十年も居住が禁止される地域ができるだろう。同じ事態がチェルノブイリでもあった」。

 ※訳注 ホットスポット: チェルノブイリ事故でも多く確認された。汚染レベルの低い地域に、部分的に異常に高濃度の放射能に汚染された地点が形成される。河川に限らず、雨水や地下水が集まりやすい地点や、泉・沼地・森などの周辺に多いが、まったく予想のつかない地点の場合もある。

 オルソン女史もこれに同意し、避難の必要な地域は拡大される、と考えている。

 「現在でも20万人が自宅を離れている」と彼女は言う。「しかし政府は避難対象地域を広げる必要があると言う。北側および西側地域の多くは、永久の禁令、つまり居住禁止ということになるだろう。かなり広い地域賀、居住でき無くなりそうだ。」




http://www.uruknet.info/?p=76685

2011年4月3日日曜日

9年目を迎えるイラク戦争

3月20日に投稿するのを忘れていましたね。 (^_^;)

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☆★イラクでの犯罪的戦争が9年目に--新しい夜明け作戦という名の占領
Criminal war in Iraq enters 9th year
- Occupation continues as Operation New Dawn
戦争と人種差別に反対する現役兵ならびに退役兵士 2011年3月17日
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http://www.answercoalition.org/march-forward/statements/criminal-war-in-iraq-enters.html

March 17, 2011

 2003年3月19日、豊かな産油国に帝国主義のルールを押しつけようと、アメリカ主導の軍隊がイラクを侵略した。「自国防衛のため」と、「民主主義の確立」というのは、この戦争の本当の狙いを隠す、すなわち「イラクの石油の非国有化」という狙いを隠すための、見え透いたウソであった。8年が過ぎて、イラク人100万人以上が殺され、何百万人もが難民化し、生活水準はバグダッドが世界で最も住みにくい都市にランクされるまでに悪化した。

 侵略戦争は2003年に始まったが、イラクは1991年からずっとアメリカの侵略目標とされていた。その間に、「湾岸戦争」で幾万もの市民が殺された。湾岸戦争のあとには、5歳以下の子ども50万人を含む、150万人を殺した大量虐殺ともいえる経済制裁が続いた。

 しかしながら、それほどの残忍性をもってしても、イラク国民をアメリカの前に屈服させることはできなかった。2002年に誕生したブッシュ政府は、人種主義を開始し、あからさまな侵略を支持する大々的なキャンペーンを張った。イラクはテロリストを輸出しているとか、大量破壊兵器を開発しているといった主張は明らかなウソであったが、それにもかかわらず、共和党も民主党も政治家は戦争を承認する投票を行った。

 バグダッドは開戦から数週間で陥落したけれども、国民に支持されたレジスタンスは、占領軍を泥沼に引きずり込み、アメリカが後ろ盾となった政権に戦いを挑んだ。戦闘はエスカレートし、2007年にはブッシュ政府が「増派作戦」を発表した。その作戦には、兵力の増強と同時に、占領に反対している覚醒会議を買収することが含まれていた。武力をともなうテロは減ったが、イラク国民は決して外国の支配を受け入れてはなかった。

 戦争が今日も続いているというのは、10年間近い占領によって経済的および社会的混乱がもたらされ、米軍も駐留しているという意味である。戦闘作戦こそ公式統計では減ったけれども、5万人の米軍はイラクに居座ったままである。

 今年2011年末までにイラク撤退が完了すると思われているが、ゲーツ米国防長官は、期限などどうにでもなる、と強く示唆した。上院軍事委員会の幹部である共和党のアダム・スミスは、今年末時点でのイラク駐留米軍の兵力数を「おそらく2万人」と言った。米軍の恒久基地と集結地は残るようになっている。

◆占領は死と苦悩をもたらした

 イラク戦争は驚異的な数の死者を生んだ。イギリスに本拠を置くオピニオン・リサーチ・ビジネスによる2008年の調査結果によると、戦争の結果として、103万3000人が死亡した。この数字は、世界で最も古く最も尊敬されている科学雑誌の一つ、ランセットによる調査結果ともつじつまがあう。

 しかし、侵略と占領によって引き起こされた人類史的な厄災(やくさい)は、この数字をもってしても本当の大きさを伝えるとは言えない。国連難民高級委員会によると、イラク人の全人口の15%に当たる470万人が自分の家から避難せざるを得なくなり、270万人は国内難民となり、200万人は国外に出た。イラクの子どもは500万人が孤児となっている。

 合法性のないイラク政府では、あらゆるレベルに汚職が蔓延(まんえん)している。イラク公共道徳委員会が発表した2009年の文書は、前年の汚職に関して5031件の苦情申し立てを報告している。3000件以上が裁判所に取り上げられたが、有罪判決となったのは、そのうちの3%にも満たないわずか97件だった。2010年に世界で最も汚職のはびった国のなかで、イラクは第4位にランクされた。

 バグダッドを除くと、イラクの人口の30%が飲料水を得られない。バグダッドでは、その数字はわずかに低い25%だが、農村部よりずっと高い。イラクの電力供給能力は、電力需要の半分を少し超える程度で、ほとんどのイラク人は基本的に電気の恩恵に浴していない。

 失業率は15%に達しているが、不完全雇用を含めるなら、それは43%に昇る。若者は特に失業者が多く、1日平均2.2ドル以下の水準にある者は23%になる。

 イラクは今、劣化ウランと化学兵器の残留物で汚染されている。出生異常とガン、そして乳幼児の死亡率は、イラクが「広島よりもヒドイ」状況になっていることを示しており、史上最悪の惨状よりもなおヒドイ。

 アメリカの干渉がフセイン政権の統治よりも良い生活をイラクにもたらす、と空想した人々は、中東で最悪の人道危機と、一般市民の大量虐殺を目の前に突きつけられている。

◆人々は反撃する

 どうすることもできない犠牲には及ぶべくもないが、イラク人民の粘り強いレジスタンスは、傲慢な政治家と米国防総省の応援団の手に負えなくなった。ラムズフェルド前国防長官は、イラク戦争は「6日、いや6週間、ひょっとした6ヶ月」続くかもしれない、という有名な予言を遺した。

 戦争をすぐに決着させ、安定した傀儡(かいらい)政権を樹立するという彼らの希望は、みずからの独立を守ろうとするイラク人民の決意によって粉砕された。教師、医師、農民、学生といったあらゆる職業のイラク人が、侵略してきた超大国に対して武器をとって蜂起した。

 5000人近いアメリカ兵が、棺桶に入って帰国した。数万人の兵士が深刻な重傷を負い、数十万人が精神的トラウマにさいなまれ、米軍によって不当に無視されるなかで、現在の自殺率の高さに至っている。イラクとアフガニスタンの戦闘で戦死する兵士よりも、もっと多くの兵士が今も自殺している。みずからの命を絶つ兵士たちは、何度も繰り返し戦場に送られ、鎮静剤と抗うつ剤のカクテルで薬漬けになっていた。

 最近の何年かは、武力闘争は沈静化したものの、戦闘はまだ日常的に発生している。米軍支援されたイラク軍とイラク人民とのあいだで、毎日のように戦闘があり、米軍は要塞化した基地に退却することができるとはいえ、毎日、米軍への攻撃が何十件も発生している。今も米兵は殺され、負傷しているのである。

 アラブ世界における民衆蜂起の波の一環として、大きなデモが最近のイラクにも波及した。2月16日には、クート市で数千人の民衆が政府ビルに押し寄せ、その幾つかを焼き払った。デモは北部のクルド地方にも及び、当局の弾圧を受けて死者が出た。

 2月25日には、イラク中の主要都市では、それぞれ数千人規模のデモが「怒りの日」として、街頭デモを行った。幾つかの州の知事が辞任した。イラクの新しい「民主主義」のもとで、警察と傭兵(ようへい)が平和的にデモをおこなっていた市民29人以上を殺害した。ジャーナリストは逮捕され、拷問を受けている。デモを呼びかけた団体の事務所は、政府によって閉鎖され、リーダーが逮捕された。

 アメリカ国民も、アメリカ政府の行為をこぞって支持するどころか、イラク人民に連帯して大規模な街頭行動に参加した。2003年2月15日、世界中で何百万人もが街頭に出て、史上最大の反戦デモに参加した。戦争がイラク人を荒廃させただけでなく、米国内の労働者階級をも荒廃させるなかで、アメリカ全土で何十万人もが参加するようになった。

 何年にもなるなか、米軍内の数千人とイラク戦争の体験者が、反戦運動に参加してきた。彼らは命令を拒否して、みずからの体験を話し、戦争反対の大衆行動を組織しつつある。

 
 帝国主義に反対する運動は、今日も続いている。3月19日、イラク戦争と凶暴化するばかりのアフガン戦争の終結を要求して、十幾つもの都市で、数万人が抗議のデモに参加した。果敢な抗議行動を通して、人々は帝国主義者の占領に終止符を打ち、イラクの完全な主権を回復させることを要求した。