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☆★殺人がクルドのイメージを汚す
Killing Taints Iraqi Kurdistan's Image
ニューヨーク・タイムズ 2010年5月20日付
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http://www.nytimes.com/2010/05/19/world/middleeast/19iraq.html?pagewanted=print
By SAM DAGHER
スレイマニヤ発 -- イラクのクルド人記者と人権弁護人は、若いジャーナリストが拷問・殺害されたことに抗議し、安全と民主主義を自慢してきたクルド地域において、言論の自由がひどく制限されていることを物語る、と訴えた。
その反応は冷たかった。殺人に抗議して先週行われたデモの途中、大手のある雑誌編集者の携帯にメッセージの言葉が届いた。その編集者が読んだメッセージには、「お前を犬のように殺してやる」と書かれていた。
今月初め、ジャーナリストのザルダシト・オスマン(23歳)が、取締りの厳重なアルビル(クルド地方の首都)で誘拐され、その後、西に50マイル離れたモスル市近くの路上で、頭部に2発の銃弾を撃ちこまれて死んでいるのが発見された。
彼の友人たちは、彼の書いた痛烈な批判記事がクルド自治区を長年支配してきた2大政党を怒らしたのだ、と確信している。特にそのうちの1つは、クルド地方大統領マスード・バルザニの娘と結婚して、貧しい生活環境から抜け出せないものかと空想するものだった。
今では、彼の死は表現の自由の限界を教えたものとなり、ジャーナリストが自分の生命をかけて発表することをめぐって激しい議論を呼び起こしている。多くの者が、イラクのこの一角に本物の民主主義があるのか疑問を抱いている。過去7年間に国内の他地域では多発したのに、暴力と治安の不安定は語られないで、事業と投資の楽園だと見なされていた。
クルドの中立紙『アウィーネ』の編集長アソス・ハルディは、「2つの勢力の間の抗争だ」と指摘した。「1つは民主主義と開かれた社会を信念に掲げる陣営で、もう一つは家族・政党・全体主義的な心情を守ろうとうする陣営である」。
ハルディ氏と彼の同僚は、クルドの著名な記者や知識人の一部と同様に、オスマンの事件に焦点を当てようと決心している。彼らはテレビやラジオでの討論をはじめ、抗議や記事でキャンペーンを開始し、「私たちは沈黙しない」と呼びかけた。
そのキャンペーンは、クルド地方のジャーナリストに困難を強いることになった。彼らは日常的に嫌がらせを受け、脅迫され、逮捕され、そして統治権力を持つ政党に忠誠を誓った治安部隊から攻撃を受けている。
バルザニを含む高官たちは、ジャーナリストを起訴する資料を作ってきた。2つの支配政党に批判的な記者と、野党勢力につながりを持つ者は、しばしば裏切り者とか外国政府の代理人というレッテルを貼られてきた。支配政党は、数え切れないテレビ局と新聞を発足させて中立の報道機関をたちいかなくさせ、また高額の給与や臨時収入で記者を買収したりしている。
しかし、イラクの他の地域と違って、ジャーナリストが殺されることは稀(マレ)であったし、越えてはいけない一線がどこにあるのかという議論も多くあった。
クルド地域で最初の中立紙『ハウラチ』の編集長カマル・ラウーフは、オスマン記者は地域の支配関係とバルザニ及びバルザニ一家について、痛烈で不敬な記事を書いたために、その1線を越えたのだ、と語った。
別のクルド人記者も、2年前、同じような1線を越えた。調査報道を得意としたソラン・ママ・ハマは、キルクーク市内のクルド人支配地において、両親の家の外で2008年7月に殺された。クルド高官が売春組織とつながっていた疑惑について書いた後だった。
スレイマニヤに拠点を置いているアメリカ人学者デニス・ナタリによると、「越えてはならない1線」には、クルドの支配者2人バルザニ氏とジャラル・タラバニの家族への批判も含まれるという。タラバニはイラク大統領という形式的なポストに就いている。
クルド地域の報道に関する法律は、表現の自由を保障しているが、「宗教的な信念やシンボルを侮辱」し、「憎悪と確執」をあおり、一般市民の私生活を侵害する記者には制裁を科している。
クルド地方政府の当局者は、地域内には何百というメディア取次機関があるが、「名誉の殺人」を当然視するほど保守的で部族社会に深く根ざしたなかでは、ジャーナリズムとしての基本的標準にかなっているものはわずかしかないと語った。彼はオスマンの死を正当化していると見られたくないという理由から、匿名を条件に話したが、「ほんとにエゲツナイ状況だ」と述べた。
クルド人作家バクティヤル・アリは、アルオスマン殺害について感情のこめた記事のなかで、権力を持つ者が設定した許容範囲は、彼らの利益にかなうように書き換えが続けられるだろう、と警告した。
アリは自分のウェブサイトに掲載した記事のなかで、「ザルダシトを殺した者は私たちのなかにいる」と書いた。「彼らは別のところで、別の誰かを、また殺すのだろう」。
ハウラティは特に挑戦的なコラムを先週書き、「私もバルザニの息子に恋している」というタイトルをつけた。
女性のコラム作家アリャン・ウミードは、「このコラムの筆者も死に値するのだろうか、それとも、名誉も尊厳も傷つけるものではない以上、わが国では通常の作品なのだろうか」と書いた。
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