2010年7月10日土曜日

バイデンの訪問で米軍撤退めぐる不安は解消せず

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☆★バイデンの訪問で米軍撤退めぐる不安は解消せず
Biden Visit Fails to Ease US Withdrawal Tensions
Institute For War & Peace Reporting 2010年7月8日付
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http://www.iwpr.net/report-news/biden-visit-fails-ease-us-withdrawal-tensions

By Abeer Mohamed - Iraq
ICR Issue 344, 8 Jul 10

 アメリカ副大統領ジョセフ・バイデンは、先週バグダッドを電撃訪問したものの、アメリカとイラクの間の緊張を解くことにも、暗礁に乗り上げたイラクの政局を打開することにも失敗した。

 アメリカはアフガニスタンに関心を奪われて、イラクでの責任を果たしていない--このように感じるイラクの政治家とメディアから、冷ややかな視線を浴びるなかでバイデンのイラク訪問が行われた。

 オバマ大統領に対しては、両国間の長期的な関係を壊してまで、8月末までに4万人の戦闘部隊を撤収させるという公約を優先している、と批判が出ている。

 米軍抜きの「安全保障」では、イラクは再び宗派抗争におちいいるだろう、という懸念がささやかれている。銃撃や爆発事件は今も毎日のように発生しており、バイデンが到着した直後にも、要塞化されたグリーンゾーンに迫撃弾が撃ち込まれた。

 米軍がいなくなれば、近隣諸国はイラクの巨大な石油収入に目をつけるだろうし、中東のゲリラ組織もイラクからの人材確保に動くだろう、と心配する者もいる。

 戦闘部隊ではない約5万人の米軍が2011年末まで残るといわれても、イラク政府と地方の当局者は、米軍及び専門部隊の撤退で市民への基本サービスの提供さえ難しくなる、と懸念する。

 バグダッド在住の政治批評家でコラムニストでもあるイブラヒム・アル・スマイディは、「オバマのイラク戦略は万全ではない」と指摘した。「彼はイラクに対するアメリカの関与に関心を払うべきで、放置して背を向けることは許されない。彼はイラクとイラク国民を血の海になる可能性の中に置き去りにしているが、アメリカには責任があるはずだ」。

 バグダッドにあるアメリカ大使館で行われた独立記念日の式典で、バイデン副大統領はアメリカの関与を約束してイラクの高官を安心させようとした。

 「9月31日を期限にアメリカの関与が消えるわけではなく、それどころか強まるだろう。皆さんが立ち上がって民主主義をうち立てようとしている時だから、われわれは経済的にも政治的、社会的にも、そして科学や教育の分野でも皆さんに協力する。」

 バイデンは三日間滞在し、総選挙から4ヶ月たったなかで高官や有力者たちと会談を行い、ライバルを排除する政治ブロックをなだめたり、連立政府づくりを促したりした。

 機能的な民主主義を樹立することがアメリカの表向きの占領目的であり、一部の政治家もそれをアメリカ政府に期待している。

 3月7日の総選挙で僅差の第1党となった政治会派イラキーヤの指導者の一人は、「アメリカはいわゆる<民主主義の生みの親>なんだから、イラクに残って民主主義の擁護者となるべきだ」と語った。

 専門家たちは、バイデンの訪問中に政治的行き詰まりが打開されなかったという事実は、アメリカの力の入れようが緩くなったことを示して余りある、と解説した。

 2つのシーア派会派が合併して、過半数の163議席に4議席足りないだけという局面になったことから、アラウィ元首相に率いられスンニ派が多いイラキーヤは危機に立たされている。

 バイデンが個人的に面談したのは、アラウィ元首相とヌーリ・マリキ現首相、そしてクルド人指導者のタラバニ大統領、INA(イラク国民合意)の指導者ハキムである。サドル陣営が40議席を獲得して次期政権のキング
・メーカー的位置を得たにもかかわらず、バイデンはサドルの代理人とは会談しなかった。

 サドル陣営の幹部アミール・カナニは、「アメリカの内政干渉は自国の利益追求から生じるもので、イラクのためではない」と非難した。「アメリカがイラクの成功を望んでいても、本当に欲しいのはからラガ信用できる成功なのだ。だからアメリカは自分たちに忠実な勢力を支援し、その他の者は互いに争わせる」。

 「マリキがINAよりもアメリカと緊密なのは、INAにはサドル陣営が含まれるからだ。したがって、アメリカは(マリキの率いる)法治国家連合がイラキーヤと連携することを模索している。そこでバイデンが抱える問題は、アラウィとマリキの両方が首相になりたがっていることだ。バイデンはどちらかに首相ポストをあきらめさせたがっている。」

 バイデンはいずれかのグループに支援を約束することはせず、全勢力が新政府に参画すべきことを明らかにした。

 「新政府が機能するためには、全員が新政府で重要な役割を果たさなければならない。皆さんが始めたことが完遂されるよう祈る。新政府が発足すれば、明確にこれまでとは違う。平和的な権力交替をイラクの全国民が経験することになる。それは、おそらく歴史上初めてのことだろう」とバイデンは7月4日(アメリカ独立記念日)の演説で話した。

 政治的行き詰まりがどのような結果になるかについて、彼ほど楽観的な者は他にいない。

 法治国家連合の指導者の一人ハリド・アル・アサディは、「いつ新政府が発足するかもわからない」と言った。「数日内ということもあるが、たぶん数ヶ月かかるだろう。誰にも検討がつかない。これはイラクの現実だ、なにが起こるかわからない。」

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