2010年8月8日日曜日

生きているというより死んでないだけ

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☆★生きているというより死んでないだけ
'We're Not Living, Just Not Dying'
By Jake Hess < IPS News   2010年8月4日付
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http://ipsnews.net/news.asp?idnews=52374

By Jake Hess
IPS News - Iraq and the Middle East

 スレイマニヤ(イラク)発、2010/08/04 - イラク北部に国内移住したクルド人に比較すると、シャマル・カディルは幸運といえる。7月1日の空襲の真っ最中に、トルコ軍が彼の住むクジン村に進行してからは、彼はある学校の校舎に寝泊まりしている。教室の温度は快適で、基本的なものには不足しない。

 「私の家族は1996年、クジン村に土地を買って家を建てようとした。それは子どもたちのためで、そうすれば子どもたちは将来にわたって住む家を確保できることになる」とカディルはIPSの取材に答えた。「しかし、今ではその夢は奪われてしまった」。

 5月24日以降、トルコ軍とイラン軍の砲爆撃がイラク北部の国境地帯にあるクルド人居住地を脅かすなかで、カディルは居住地を追われたクルド人6500人のなかの一人である。移住のやむなきにいたったクルド人の3分の2は、不毛の山岳地帯に点在するテント村に住んでおり、彼らの生活必需品は地方行政当局と国際援助機関によってかろうじて補われている状況だ。

 サンガサル町のドリ・サヒダン地区に住む国内移住民ハリマ・イスマイル(女性)は、「劣悪な環境なので、ラマダンの早い時期に住民はここで死ぬだろう」と説明した。

 ドリ・サヒダンの住人であるシャム・アハメット(92歳)は、「私は着の身着のままで逃げてきた」という。「援助組織がテントを届けてくれるまで、私たちは何日も野宿した」。

 イラク北部の都市スレイマニヤにある国連難民機関の事務所は、「秋雨で川の水量があがるので、ドリ・サヒダンに住む約500家族は3ヶ月以内に再び移住することになるかもしれない」と言う。

 国内移住民キャンプに住む人々は、支援が貧弱だとか、健康管理体制あるいは夏の猛暑、そして電気が来ないことについて不満を募らせている。多くの者が、収入源だった農作物の作付け時期に土地から追われたので、経済的にも破局に直面している。

 ゴジャル国内移住民キャンプに住む男性アブドッラーは、「畑も穀物もブドウ園も、すべてが爆撃で焼き払われた」とIPS記者に語った。「ここでは収入が得られない。生活といえる状況ではない。生きているというより、死んでないだけ」。

 スレイマニヤに駐在する赤十字の職員は、このキャンプでは、現在のところ、差し迫った人道危機という状況はないが、適切なトイレ施設がなく、ゴミ処理にも問題を抱えているので、衛生状態が悪化しかねない中程度の脅威が存在する、と指摘する。

 それにここは攻撃にもさらされている。最近の砲爆撃の結果、少なくとも子ども2人が死亡したほか、数人の住民が負傷した。

 トルコ政府は、この攻撃は左翼ゲリラであるクルド労働党(PKK)を狙ったものだという。PKKはトルコに住むクルド人の自由と権利の拡張を要求している。トルコ政府は、PKKが軍事作戦を開始するよりも早い時期から、イラク北部を定期的に砲撃してきた。

 他方イランは、国境越えの砲撃について、クルド自由党PJAKを狙ったものだと主張する。PJAKは、イラン国籍クルド人の武装組織で、イデオロギー的にも組織的にもPKKと結びついている。

 2007年には、ブッシュ政府はPKKをアメリカ及びトルコ、イラクの「共通の敵」と見なしていた。アメリカ政府は、国境をまたいで活動するPKKの拠点に関する生きた情報を、トルコ政府に提供し始めた。それ以降、トルコとイランはそれぞれイラクとの国境に近いクルド人集落に対して、連携しながら爆撃と砲撃を繰り返している。

 トルコ軍の参謀長イルカー・バスブグは、2008年当時、「彼ら(イラン)が作戦を開始すると、われわれも同じようにする」と発言していた。「彼らは国境のイラン側から、われわれは国境のトルコ側から作戦を展開するのさ」。

 PKKの歴史でもある『血と信念』の著者アリサ・マルコスは、イラク北部から国境を超えて攻撃する能力に対しても、新人を惹きつけるという面でも、こうした攻撃がPKKに甚大なダメージを与えているとは思えない」という。「地形が険しいためにトルコ軍の飛行機が彼らを攻撃するのは容易ではなく、ゲリラに死亡者が出ることは滅多にない」。

 しかし村人や援助機関のスタッフたちは、トルコ軍とイラン軍の爆撃はますます激しくなり、近年の状況と比べると一般市民の居住地にも近づいている、とレポートしている。

 トルコ政府は最近になって、イラクとの国境沿いにPKKと対峙するため新たな特殊部隊を派遣し、国境地帯に150の新しい陣地を構築する計画を発表した。米軍もまた、トルコ軍のPKK攻撃を支援するために、イラク領空に空域を拡大しはじめた。

 「われわれは武器供与を含めて、トルコ支援となりうる別の手段を模索している」と、アメリカの駐トルコ大使ジェイムズ・ジェファリーは説明する。われわれは基本的に、トルコのために、できるだけ速やかに、可能な限り多くの成果を挙げようと努力している」。

 PKKは一方的に宣言した停戦通告を6月1日に取り消し、それ以後はトルコ軍陣地への定期的な攻撃を行うだけになっている。

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